むーみん協奏曲

ただのサラリーマンの日常です。

物理学は生きている

先日、会社の出身大学OB会による飲み会があった。

今年も出身大学から数人の新入社員が入ってきて、歓迎会をやったのだ。(私は幹事だった。)

在学中に顔見知りだった人などほとんどいないのだが、『同じ大学出身で同じ会社で働いている』と言うだけで話題には困らない。
話しは大いに盛り上がり、楽しい時間を過ごさせていただいた。



新入社員歓迎会ということなので、各々自己紹介をした。その際に同じ学科出身の1つ上の代の先輩が言ったことがとても印象的だった。

その先輩は現在うちの会社の製品の制御用ソフトを、C言語で作っている。
私がやっているのはアプリケーション系でJavaC#を主に勉強している(Cも勉強してはいるが、優先順位は低い)ため、少し畑違いといえばそうなのだが、近い境遇にいるということで勝手に親近感を持っていた。

『今はようやくC言語である程度自由にソフトを書けるようになりました。仕事の勉強はもちろん大切ですが、家では今でも大学時代にやっていた物理の勉強を続けています。
将来的に量子コンピューターの理論を理解したいと思っています。』

その言葉を聞いて私は胸の中の霧のようなものが晴れた気がした。

私にとって物理学は過去に学んだものとして片付けられていた。
自分にとって未知の分野で仕事をしなくてはならなくなり、その勉強が最優先だった。

しかし、過去の研究についてはずっと気がかりだった。
展示会に行けば太陽電池有機ELのあるブースを訪れて話を聞いたし、ドクターへ進学した友達からは自分のやっていた研究は今どうなっているのかと詳しく聞いた。


『この世の中を根底から支えている学問は何か』
という質問をしてみよう。あなたなら何と答えるだろうか?

物理学者はそれを『物理学だ』と答えるだろう。
確かに、この文明社会は難解な物理の法則によって成り立っている。

数学者はそれを『数学だ』と答えるだろう。
いかに難解な物理の法則を見つけようと、テクノロジーとして活用するには難解な数式を扱わなければならない。高い数学の知識を持たずして文明社会は作れないだろう。

また、化学者はそれを『化学だ』と答えるかもしれないし、経済学者は『経済学だ』と答えるかもしれない。

結局、様々な学問が集合したところに高いテクノロジーが生まれるのだ。それがイノベーションだ。

『私はIT技術者なので、他の学問は知らなくてよい』
などと言うことはとても馬鹿げたことだ。日本人だから英語を学ばないと言っているようなものだ。
ITに関連した仕事はこなせても、その先に進むことは出来ない。


私は大学院時代に共同研究先の企業や大学から有機半導体を作るための高分子材料などをもらっていたことがある。
私にはそんな高分子を合成することは出来ない。

だが化学者たちもまた、自分の作った高分子材料により作られた有機薄膜太陽電池がどんな物性を持っているのかを知ることが出来ない。

互いに協力しあって明日のテクノロジーを作っているのだ。

その際、物性を調べる上でもらった高分子の最低限の化学的な知識を知る必要がある。その上で物理学的な視点で考察を述べさせてもらった。
また、化学者も物性を調べてもらっても、物理に関する知識が全く無いため、内容が理解できないでは話にならない。
より良い高分子材料を得るために、互いが互いの学問をある程度知っておく必要があった。



私も学生時代には量子力学を学んでいた(量子コンピューターの理論はわからないが…)。
シュレディンガー方程式C#を使ってイノベーションを起こせと言われても何も思い付かない。
しかし、情報技術やプログラミングを学び続けていくうちに、かつて学んだ(もしくはこれから学ぶかもしれない)物理学の知識により、新たなイノベーションが起こせるかもしれない。

それが、情報系出身でないITエンジニアである自分の強みであると思っている。

私の中の物理学はまだまだ生きているのだ。